【review】罪と罰/ドストエフスキー

下巻を読み終えた。


話は、元大学生のラスコーリニコフが、一つの罪は百の善行によって正当化されるという考えの基、悪徳高利貸しの老婆を殺害するところから始まる。もちろん彼を殺人に導いたのには、彼の思想だけでなくて、困窮や妹が自分のために犠牲になっているということなど色々あるのだけれど、殺人を実行した際、たまたま居合わせた老婆の善良な妹まで殺してしまう。
自身の罪の意識や判事のポルリーフィからの尋問、妹の結婚話などを通して段々ラスコーリニコフには、罪の意識が重くのしかかっていく。


全体的に暗いんだけど、深いテーマだなぁって思った。
ラスコーリニコフが自身の「凡人・非凡人」理論をどれだけ信じていても、やはり理論だけでは生きていけない。
理論がどれだけ正しく見えても、現実は完全には予測することはできない。
社会は人間と人間の関係性の間に成り立つから、完全なる予測は不可能なんだろう。
ドストエフスキーは生涯女性関係や借金などとの縁がつきなくて、必ずしも望んで小説を書いていたわけではないと思うけど、だからこそこういう小説が書けるんだろうなぁ。
ラスコーリニコフは最後にシベリアに送られるけど、自身も思想犯としてシベリアに送られたことがあると知ってびっくり。
本当に波瀾万丈な人生だったんだなぁ。


罪と罰」は私にとって、「カラマーゾフの兄弟」以来の2作目のドストエフスキー作品で、2作しかまだ読んでいないからドストエフスキーについて包括的なことは言えないんだけど、どちらも主人公の精神面に焦点を当てていたと思う。しかも、主人公の内面を止めどなく描いているからとてもゆっくり物語が進んでいるように見えて、主人公をとりまく環境や本人の行動はめまぐるしく変化していっている。これがドストエフスキーのaddictiveなところ。主人公の内面が、自問自答とその他の人との関係の中でどう発展していくかがすごく細やかに表現されている。


次は借金に追われて1ヶ月で書き切ったという「賭博者」かなぁ。